イエメン、アデン入港

9月27日
午後10時半、予定通りアデン入港。
折からの月明かりに遠く海上に突き出た○○とした巨峰を望み、
燈豪の明滅するのを見ながら巨峰の背面に廻って停船する。
明朝５時出帆に決定。アラビアの土を踏もうとランチで上陸する。
暗く小さな寂しい海を一巡する。
埠頭の岸壁、街のペーブメントの石敷きに横たわるアラビア人。
白衣に白布の頭で、半ズボンはカーキ色、ヘルメットの英国官吏の間をうろついている。

アデンは水に乏しい。
したがって樹木はほとんどなく、わずかに1、2種を数えるばかりで、
柳のようなものと公園に草の類を見ただけだ。
商店は2階建てで道路に沿って5、6段の石段を設け、
前面はみな回廊を控え店舗となっている。

すでに夜遅く、アラビア人はこの回廊にごろごろと眠る。
大方の店舗は閉じているが、1〜2件の店で灯りがともり商品が並ぶのを見ると、
それらはみな外国人向きの日本製品である。
ちょっと旅順の○市街に似ている。

雨水を集めた水源地、飛行場そのほか●田等もあるが、夜暗がりなのでよく見えない。
本船は遥か沖に不夜城の英姿を浮かべ、
折からの月下に静かに反映する様は美しい。

船室内は華氏85度。
窓を開けて通風を講じても暑く、自然に汗が吹き出て寝苦しい。

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