2010年4月9日金曜日

インド夜話 “サドゥ”とは



インドの「サドゥ」は有名である。
5寸釘をびっしり打ち付けた板の上で苦行するのだ。
中には1日中、あるいは幾日も逆立ちしている苦行者もいるという。
頭髪は伸びるにまかせ、身体には布1枚を付けただけで寒暑ともにこの姿である。
苦行による解脱に努めているのだが、ちょっと見では狂人か乞食にしか見えない。
このサドゥが所々で摩訶不思議なことをやるというから薄気味悪い。
こんな話がある。


カルカッタの中央にニューマーケットという公設の市場がある。
あるときここへサドゥが現れ、赤レンガ敷きの道路に座り込んだ。
とても混雑するところで、行き交う人には迷惑至極、
巡査が追い払おうとしたがなかなか動かない。
巡査は怒りだして無理矢理に引きずり出そうとしたが、
大地に根を下ろしたように碁石のごとくびくともしない。巡査はめちゃくちゃに殴る。
目をつぶっていたサドゥはやおら目を開いて巡査をじっと見た。
すると不思議にも巡査はふらふらとその場に倒れ、まもなく死んでしまった。
しかもそれから火を発し、サドゥともども焼け死んだそうだ。
その後、死骸を取りのけようとしたがどうしても取れなくて、
レンガで包み込んだのだそうである。


こんな話もある。
スルワリの1人が競馬に夢中になって負け、百万長者がまる裸になってしまった。
茫然自失で競馬場を出ると、そこにサドゥがいた。
彼はサドゥの前にひざまずき一部始終を語って哀れを乞うたが、
サドゥは一言も発しないで歩き始めた。
スルワリはその後を付いて行った。
サドゥは振り向きもせず足を運んでいた。すでに夜遅く、やがて真夜中となった。
それでもサドゥは歩き続けている。ふと立ち止まってガス灯を指差した。
そこにはガス灯の番号が白いペンキで描いてあった。
スルワリは「あっ」と声をあげるや一目散に我が家へ戻り、
出来得る限りの金策をして次の競馬に出掛けて行き、
ガス灯と同じ番号の馬に全財産を賭けた。
すると不思議にもその馬は勝ち、彼は1日にして財産を取り戻した。
狂喜して家に帰ると件のサドゥが門前にいて、スルワリは地に額を付けて礼を言う。
するとサドゥはおもむろに口を開き
「今後競馬をやるな」と告げて姿を消した。


サドゥに生命を救われ、病を治してもらう者もよくいるようだ。
また、気合術で色々なことをしたり、奇術などもやっている。
たとえばマンゴーの実を乾いた大地に置き水を注ぐと、
皆の見ている前で若木になったとか。
この手の話はなかなか止みそうもない。


ただし最早12時を過ぎた。ボーイにジュースを持参させ、
それを飲みながらまた、ここでは書けないような色々な話も聞いた。
実に愉快であった。

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