2010年4月30日金曜日

ロンドンを名残惜しむ




11月4日 
午前10時頃からクリスタルパレス見物に出掛ける。
いよいよ濃霧の時季となり、今日はかなり見舞われた。
ロンドン滞在の25日間は天候に恵まれ、どれだけ能率をあげられたことやら。
旅程変更は大成功だった。
しかも出発間際にはロンドン名物の濃霧も見せてもらった。
太陽はちょうど磨きガラスを通して見るようで、
テムズ河の対岸はまったく見えない。
混雑する市街の自動車や人や馬車、大きな建物などが皆、
霧を通して美化された眺めもまた一入である。


クリスタルパレス(1936年に焼失)は案外と大きい。
鉄骨ガラス張りの大温室のようなものである。
パリのエッフェル塔と同じく、博覧会の遺物である。
内部はあまりに広いので、臨時の興行的なことにも使用されているようだ。
しかも建築各時代のモデルや有名な彫刻のイミテーションがたくさん並べてあった。
ここは高台で、天気がよければロンドン市街を見晴らせるそうである。
後にこのクリスタルパレスは私のベルリン滞在中、12月のある日に全焼してしまった。

荷物の整理などを済ませ、辺りを散歩する。
いよいよ帰ると思うと見るものも懐かしく名残惜しい。
再度来ることもないだろうロンドンよ、
実に真底の知れぬロンドンよ。
旅行案内には『ロンドン通と誰が言い得よう』と書いてあった。
たしかに実際に分かり得る人などはあるまい。

0 件のコメント:

コメントを投稿