2010年4月26日月曜日

オックスフォード

10月28日 
今日はオックスフォード行きである。
午前6時半起床、向こうの屋根に太陽が反射している。晴天である。
一行は朝鮮総督府のO氏と、東京池貝鉄工所の子息と丁君の4人である。
ホテルの自動車を主人が運転する。
片道約100マイル、汽車で行けば2日がかりの旅を1日でやるのだ。

1時間ほどで、先頃ボートレースの開かれた湖のあるところに出る。
岸辺の老樹が紅葉し、静かな水辺に真っ白いスワンの群、点在する田舎家、よい眺めである。
沿道はなだらかな一面の芝生が青々と、折からの秋も豊かに、紅葉の並木が道を覆う。
丘と森の連続、澄み渡る小川の流れをみやるうち、やがてオックスフォードの街に着く。


この街は街に学校があるというより、学校の中に街があると言った方がよいくらいだ。
帰途見物することにして車をさらに進め、
ストラトフォードナボンシェイクスピアの遺跡を訪ねる。
古く錆びついた寂しくて物静かな街である。家々の庭には秋草が乱れ、薔薇の生け垣、
紅葉の大樹を背にした粗石葺きのシェイクスピア夫人の家。
その粗野な、愛すべき詩的な家。あの物静かで愛に満ちた多くの作品も、
この粗野な内に気品をたたえた家で暖かな婦人の愛によって織り出されたものであろう。
シェイクスピアの生家であり、最後の家も見た。
彼の遺物を納めた博物館もある。
静かな森の中に建つ寺院に、彼らの永遠の住まいである墓も見た。
彼の洗礼から最後の埋葬までが記録された古い一冊の帳簿が置いてあった。
彼の名を冠した有名な劇場もあったが、先年焼けてしまい今は粗末なものができている。
この街はすべてがシェイクスピアで持っていると言ってよい。

昼食時になったので、テムズ河の上流の緩やかな流れを前に、
青々とした芝生の広がる紅葉の樹下で持参の弁当を開いた。
対岸の常緑樹の間の色とりどりの紅葉、
樹の下で落ち葉を焚き上る紫煙、絵のような存在である。

食後、オックスフォードの街に引き返す。古く気品ある街である。
ここのカレッジは寄宿舎を中心に各種単科大学があり、礼拝堂、講堂、図書館もある。
建物の間は美しく芝生が敷かれ、散歩道があり、中央に大きなドーム型の礼拝堂がある。
内部は図書館として使われていた。その屋上のテラスに昇って市内を見下ろす。
形の変わった色々な塔があり、これが皆別々のカレッジである。
街の中をテムズ河が静かに流れ、河岸の紅葉が盛りで見ごとであった。

この大学はケンブリッジ同様私立で、英国自慢の大学で優良な英国紳士の養成所である。
街の店でカレッジの紋章入りの旗などを買い帰途に着いた。
早や黄昏、満月に近い月が右に左に、樹間に宿る。


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