2010年6月15日火曜日

在ドイツ邦人宅を訪問する




夜、ベルリン満州国通称代表であるK氏の自宅に招待された。
住まいは市の南方郊外の住宅街で、
庭園を広々とった2階建ての相当な住宅が続いている。
概して古い様式のものが多く、プレートなどでお馴染みのものも見受ける中に、
新様式の白壁フラットのものもあった。

主人、令嬢の出迎えを受けてしばらく応接室で雑談、やがて食堂に案内され、
婦人に心づくしのドイツ料理をご馳走になる。
話せば料理の苦心談など、様々なことをお聞き出来た。
特にベルリンは魚類に不足し、野菜その他は実に高値であるそうだ。
日本料理は材料に困るそうで、日本などでは想像もできないことだ。

日本人の海外居住者の苦心は実際に同情に堪えない。
考えてみたまえ、味噌なし、醤油なし、茶もなし、豆腐もこんにゃくもない。
その他日本では特に貴重でもないような調味料のショウガも山椒もないのだ。
このような状況下では日本食とはいかない。
しかも常食の米はイタリア米で、色は黒くサラサラで油気のないものだ。実際心細い。
小さいお嬢ちゃんなど、子供心にも故郷を思い出して
「こんにゃくが食べたい」などと言って困らせるそうだ。
日本のものは子供でも制して食べるそうで、聞くだけでもいじらしいではないか。
日本茶も来客時にだけ使われ、家族は紅茶のお茶漬けだ。
贅沢は言えない。帰って子供たちにも話してやらなければならない。
K氏は5人の令嬢をもたれ、皆それぞれベルリンの学校に通学しておられる。
10時に辞す。

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