2010年6月9日水曜日

音楽会、夢幻の調べに酔う夕べ

ベルリンのいわゆる下町に出て市役所に行く。
赤レンガのゴシック風建築で、オリンピックのために化粧直しをされていた。
ここの地下で昼食をとる。
どこの市役所にも地階にレストランがあり、割合に美味いものを安く食わせる。
帰途、近くのデパートで子供服を見た。
スキー用の毛の帽子と首巻きがおもしろいので、2、3個買って新京に送らせた。
今晩はフィルハーモニーがあるのでT君の案内で行くことにする。
丁君は疲れて帰るというので荷物を頼み出掛けた。

7時の開演までまだ時間がありファーターランドに寄る。
見物はこの次として、ここのシネマを観て定刻に音楽会へ行く。
付近はすでに自動車と人の波、皆タキシードや燕尾服、
婦人はドレスに身を包んでいる。場内は大変な人だ。
大ホールは金色燦然たるもので、正面のステージは段型となり、
約100名の楽士は礼服に各種の楽器を持って控え、
階上にはギャラリーがあり、約6000人を収容できるそうだ。
やがて白髪のコンダクター、サバタ氏が嵐のような拍手に迎えられて、
中央に着座し聴衆に挨拶する。イタリア人とのこと。
曲目はヨハン・シュトラウス作、ドンキホーテの物語。
低く高く、遠く近く、万雷のごとくあるいはまた水流のごとく、
約1時間に渡る演奏に酔わされ急賛総員規律のアンコールの拍手。
その後第2曲目、ボレロが始まる。
ちょっと日本の何かに似ているように思った。これで約20分の休憩である。

広間に出てコーヒーを飲んで一服する。
やがて開演のベルに再度着席、第3曲目、ブラームスのシンフォニーである。
その哀音は斬時強大となり、無限に引き延ばされる夢幻の調べ、
思わず瞑目すると、約100人による各種の音色もただ1つの音となる。
ホールも聴衆もいずこにか消え、身体は天上遥か美しき夢の中を飛ぶ喜びである。
恥ずかしいことであるが、私はいまだこのような音楽を聴いたことがなかった。
音楽に対する目を開かせられた気がする。子供のためにもよいだろう。

この建物は1838年造、今から100年ほど前のもので、
外観は立地の関係もあって倉庫のようだが内部は大変立派である。
ことに聴衆がおそらく中流以上の人たちだろうが、教養を備え、
音楽に対する理解を持ち、訓練されていることには感心した。
約6000人以上の人々はコトリとも音をたてず、囁き声ひとつしない。
その極致の妙技は楽曲が終わるまで拍手などしないことである。
日本でもこのような個人的な修養と、大衆の訓練とに一層の努力の必要を考えさせられた。
4年後のオリンピック招致に成功したといえ、スポーツばかりのことではない。
国民全体が各種所作で嘲りを受けないようにしなくては、真の成功とは言えまい。
就寝前まで色々と考えさせられた。

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