正月七日 午後3時
いよいよローマ行きである。
この駅は最近完成した新様式でちょっと面白いものだった。
車中では1人のイタリア人と同席した。
席に落ち着くなり片言のドイツ語でしきりに話しかけてきて、
ローマまで約4時間あまり、退屈しなかった。
彼は弁護士で、1931年頃満州に行ったことがあると言っていたが、
満州のことはあまり知らないように思った。家族の写真を見せあったりした。
沿道の景色は実に良い。緑樹の合間に続く家屋、
なぜか平野はあまりなく、多くは丘や山である。
昔日の群雄割拠の跡とのこと、緑の中に白壁赤屋根を纏った建物が続く。
絵のような風景である。
汽車は約30分遅れて午後7時40分、ローマに着く。
ポーターに荷物を渡すと私たちの目的のホテルをちゃんと知っていた。
5分くらいで行けるから俺が連れて行ってやるとドンドン先に立って行く。
まもなく前庭のあるさっぱりとしたホテルに着く。ここは日本館である。
折よく部屋もあり、早速主人に挨拶を受け久しぶりの日本食に舌鼓を打つ。
食堂にはミュンヘン滞在中の金沢の医師某氏がおられた。
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