正月11日
今日は好天気で風もなく、実に暖かい。博物館見物に出掛ける。
宗教的彫刻と絵画である。有名なビーナスの座像も観た。
敷いてある布団なども知りつつ、みな触ってみた。
ここを出て美しい公園を散歩し、動物園の前を通り美術館前に出た。
建物は白大理石のクラシックで立派なものである。
背面に丘を控え、植え込みとの対称が実に好い。
ちょうど正午の太陽を正面に受けて実に綺麗であった。
樹木の中の静かな池、池畔のヴィラ、水鳥が遊ぶ平和な眺めである。
散歩道路の両側には赤いシクラメンが長方形に植えられて見事なものだ。
ローマの街路樹の下にはこのシクラメンやヒヤシンス、桜草などが美しく植えられ、
他の都市以上に花店が美しい。所々でスミレの花束を売っているのが目につく。
ぶらぶらと馬場に出る。軽装の美女がたくましい馬に乗り、
馬首を並べて睦まじそうに歩いている。
それをたくさんの人が羨ましそうに見物している。
今日は別に休日でもないのに暢気なものである。
ここばかりでなく、欧州では一様に公園が繁昌している。
一様に外国人は戸外を好み、特に公園を愛する。
ちょっとでも暇があれば外に出て散歩し、公園で自然に接し太陽を浴びる。
考えてみれば家には庭もなく、高い建物で1日中
日当たりの悪い所に暮らしていては無理もないだろう。
午後はフォロ・ロマーノの遺跡に行き、廃墟の中を右に左に
丘の神殿の跡がわずかに残る壁にもたれて市街を見下ろした。
2千年前の在りし栄華を思い感無量である。
コロッセオのわずかに残る観覧席に腰を下ろし、ネロの暴政を思い、
目前に迫る悲劇を思い描いた。
今日で憧れのローマも大体見学を終えた。
明日は陸軍武官、A中佐を訪問する約束である。
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