2010年9月18日土曜日

インターラーケン Interlaken の大晦日


やがて暗闇のインターラーケンに着いた。
外に出て空を仰げば満点の星、明日の晴天を思わせる。

「ユングラフはいいぞ」とかねてK君が紹介してくれた「ホテル・ユラ」に投宿。
駅に近くこじんまりとして、従業員はすべて家族の者、主人夫婦に綺麗な15、6の娘。
サロンでウイーンのラジオを聞いていたマダムが部屋へ案内してくれ、
バスの世話をしてくれる。空腹を覚えて食堂に出る。
ここではめずらしくウエーターが女で、5フランのワインをあおるとなかなか美味い。
付近で穫れる川魚のフライも美味く、久しぶりに食事らしい食事をした。
食後、マダムがサインブックを持って来る。見ると知人が多い。
板垣参謀長の名もある。満鉄の方々も多い。K君の詩吟も見える。N君の墨絵もよい。
何か書かなくてはならないが、ワインの元気で明日に伸ばしてもらう。
サロンでマダムや娘らと語り合う。沢山の写真を見せられ、我らも家族の写真を見せると、
なんとめでたい家族だろうと立って握手を求められた。
日本のクリスマスカードや絹のハンカチを宿の娘にプレゼントした。
語る言葉は英・独語交じりの片言だが、楽しい夕べはなかなか終わりそうもない。

4時頃から大晦日で静かな街の中へ出る。さすがに少々寒い。5〜6度だろう。
だが外套なしの人も多い。少し行くと郵便局前の広場で音楽が始まっている。
たくさんの人々が暗く寒い街路で静かに聴きいっている。
こうして今晩は夜通し起きているのだそうだ。
田舎町とて、出たり入ったり特徴のある建物が多い。

宿に帰れば2、3の家族があつまって盛んにトランプに興じている。
マダムが熱い茶を入れてくれ、明朝の出発は早いからと床を勧める。
部屋に戻るが大晦日だと思うとなかなか床につけず、またワインをとる。
ちょうど今頃は日本の元旦で、子供たちが大騒ぎだろうと想像する。

康徳3年12月31日は、無事に遠くスイス、ユングラフの麓で終わる。
明日は元旦、世界最高のユングラフの頂上で迎えるのだ。
希望と努力の新春だ。

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