12月30日
早朝から珍しく陽光を見る好天気だ。
旅での会合は会うが別れである。
朝、T博士に別れを告げて、12時50分パリ・リヨン駅発の列車に乗る。
タクシーはセーヌ河沿いに人と自動車のあいだを縫って走る。
エッフェル塔は頂上まではっきりと見えた。
この塔を中心に今、建築の博覧会場も大部分が出来上がり、
例のトロカデロを改造して正門にする工事も大半を終え、
左右の高い建物も仕上げ工事に忙しい様子。
博覧会場とはいえすべて鉄骨鉄筋の本建築ばかり。
日本のそれとはまったく趣を異にする。
パリ・リヨン駅はパリに初めて降り立った駅だ。
その時は夜のことでわからなかったが、
今眺めるとフレンチ・ルネッサンスの趣の高い塔などがあり、
昔モデルにしたこともあって懐かしさを感じた。
列車は満員、少し早く来てよかった。窓際の席に着く。
2人ずつ6人1組で身動きもできないほどだ。
向い側のプラットホームでは、若い男女の別れの抱擁シーンが何組も見える。
しまいに彼・彼女らはところ構わず接吻する。
プラットホームの群衆はまったく気にせず見向きもしない。
外国ならではのステーション風景である。
定刻発車、郊外の景観はベルリンの方が遥かに美しく、
こちらは建物も粗雑で景色も悪い。
打ち続く野菜畑に日本の●の形をしたガラスの蓋をしたものが数千、見渡す限り続いている。
温床だろう。やがて川沿いの美しい丘を通り、
川向こうに平野、樹木の茂みに一時よい眺めが見えた。
列車が止まるたびに多くの人が乗り降りする。
車内には上品な白髪の老人が5、6歳の子供を連れて乗り込む。
人々は身動きもできない中で互いに席を譲り合う。
面倒なのと腹が減らないので昼食を抜いたが、
さすがに7時の夕食までは我慢ができず、4時のお茶の時間に食堂に行く。
満員の列車は午後9時40分、ジュネーブに到着。
湖畔の「ホテル・メトロポール」に投じる。
見物は一切翌日にまわし、入浴後、水の都・ジュネーブの湖を
心地よく見下ろしながら絵はがきを2、3通出して床に入る。
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