1月1日
康徳4年元旦、7時に起こされて目覚める。
7時50分、登山列車が出るので荷物を整え食事もそこそこに駅に急ぐ。
元旦だというのに相当の人出だ。
大抵はスキーヤーで、列車はほとんど満員である。
我らのことを宿のポーターが若い夫婦に頼んでくれる。
この若夫婦とチョコレートをかじりながら話しているうちに、
2人はドイツ、シュツットガルトの建築家であることがわかる。
話は一段と油に乗ってきたと言いたいが、なにせ英語・独語まじりの片言なのだ。
彼は今、シュツットガルトでアパートの現場監督をやっているとのこと、
6月にはベルリンへ戻るという。今ドイツでは仕事がなく、
建築家はあまっているが東洋はどうかと聞かれる。
満州国の話をしたが本気にはしなかったようだ。
面白いことに夫人も建築家で、一緒に事務所で働いているとのことだった。
スキー場で下車し、3度乗り換えて終着駅に着く。
今日は季節はずれの晴天で、列車内は暑いほどスチームが通っている。
座席の前方に東洋人らしい夫婦がいるので行ってみると、
九大のI医学博士で、ドイツ滞在中正月の休暇を利用して旅行中とのこと。
車内では満杯のスキーヤーが、男も女も歌い叫ぶ賑やかさだ。
列車は次第に山に差しかかっていく。雪が深い。
前面を覆うような山々、荘厳の美、巨大な氷柱の連続、天にそびえる岩。
6〜7千尺ほどの場所で大概のスキーヤーは下車し車内は急に静かになる。
駅の前面は深い谷、麓に続く大渓谷白涯々雪の峨々たる連山、
峰の間の大なだれ、壮観そのものである。ここからすぐトンネルである。
長さ約9キロの舗装なしのアブト式、急勾配のアブト式を進み、終着駅まで約40分、
そのうち2カ所ほど横孔を掘り、乗客を下車させ見物出来る。その景色は偉大だ。
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