午後7時、薄暮に染まる雲のあいだを出帆。
交換屋や土産物売り、案内人その他、マレー人やインド人の群が
極彩色の小舟にきちんと乗って帰ってゆく。
真っ黒な体にまとった原色の着衣、海の色に映え1枚の絵のようだ。
烈日のもとに色彩濃厚、熱帯植物を背景にしてなんともよい調和。男性的で実に痛快だ。
夜、コロンボ(セイロン島)に赴任されているH領事と談笑する。
外交官としてのさまざまな苦心談を聞いた。
平和の折衝と直接行動との比較など、実に同情する。
氏とは満州在住の共通の知人が多くいたので色々と話す。
9月18日 午前7時に目覚める。
昨夜半、時計を遅らす。左にスマトラを遠望し、右にマレー諸島を眺め航海する。
ベンガル湾の波はやや荒いものの暑くはない。
午後4時、食堂でHコロンボ領事によるエジプトに関する講演があった。
夜はデッキで活動写真があったが観ずに、床の上で旅行記を読みふけった。
9月19日 波が高く、船はかなり揺れる。
朝の運動を終え、髪が伸びたので理髪屋に行くとチックを付けて綺麗に分けてくれる。
ハイカラになった。この日は終日船室で読書する。
夕食はAデッキですきやき会がある。外国人の男は郵船のハッピを着て、
婦人は船客の日本婦人から借りた長帯という装いで、
食後には東京音頭やダンスなどもあった。
私はこの賑やかさをよそにデッキチェアでH領事、京大のS博士などと建築論を交わす。
およそ日本に節度と個性のないことを嘆く。
9月20日 この日も終日船室で読書をする。
あまりの退屈さに1枚のスケッチをした。
明日コロンボ到着のはずなので諸方へ絵はがきを書いた。
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