午前中は教会へ行き、公園や郊外に出掛け、仕事のことは忘れて朗らかに休養する。
働く時間と遊ぶ時間を明確に区別している。
商店は薬屋と小さな飲食店しか開いていない。興行物なども早じまいである。
新聞はもちろん、郵便配達も全休である。交通機関までが少なくなる。
平日でも閉店時間が確守されて、書簡は12時半頃から2時まで休み、夜は7時に全部店を閉じる。
あまりに徹底しているので旅行者には実に不便で、日曜日などは過ごしようがないくらいだ。
酒を飲むにも制限がある。
料理店では午前中は一切飲酒できない。
正午から午後3時まで売り、3時から6時までは禁じられ、6時から11時まで許すのだ。
これは料理店のことで、酒商では午後7時以降は絶対に売らない。
執務時間の飲酒は禁じられ、これが正確に実行されている。
欧州での飲酒はパリのワイン、
ベルリンのビール、
英国のウイスキーと相場は大体決まっていて、
ここロンドンでは良いウイスキーが安く飲めると思っていたのだがそうでもない。
内国消費税がかけられているからここは非常に高い。外国で飲む方が安いのだ。
街を歩いていると人道では音楽をやっている。
その脇には帽子が上向きに置いてある。中にはいくらかの金が投げ入れられている。
通行人も立ち止まって聴いている。1人の者や、4〜5人の大掛かりのもある。
辻にはマッチ売りのおばあさんがいて、
日本のようにタバコにマッチなど付けてはくれない。マッチはなかなか高いのだ。
街頭の花売りも奇麗なものだ。
新聞の売り子が記事を手に声高に怒鳴り、
靴磨きが辻々にいて通行人に声を掛ける。これらの多くは地下鉄の入口にいる。
ロンドンでは地下鉄をチューブ、
パリではメトロ、
ベルリンではウンター、
ニューヨークではサブと称するそうである。
ロンドンの地下鉄は六、七十尺から百尺くらい地下を走っており、
戦争時の避難所にも適当とされている。
歩道から通じる階段を降り、地下の広場で切符が売られ、
ピカデリーなどの広間の周囲は皆、有名な商店の装飾窓に使われている。
改札口からは百尺近くをエスカレーターでさらに下り、これが大きいところは二畳ほどもある。
急がない人は右側に、急ぐ人は左側を走って通る。
電車はおよそ1分おきに走り、1・2等に区別され、喫煙車は別に付いている。
地上のような交通制限がなく、ゴー・ストップもないため
最も早く移動できるので、たくさんの人に利用され
乗降客はどこもいっぱいだった。
0 件のコメント:
コメントを投稿