9月7日
昨夜、あまりの暑さに窓も入口も開けて寝たせいか、今朝は少々頭が重い。
O氏の案内で黄浦江(こうほこう)付近の新市街地を観る。
市の中心からおよそ1里くらいある平地の畑の中に、縦横に舗装道路が完成している。
その中心に市政府の建物が完成しており、壁は蘇州産の赤花崗岩で
大きな緑色の古代屋根を架けた2層楼だが、屋根の中にもう1層あるらしい。
正面には大階段が設けられている。建物は全体的によくまとめられていると思う。
これと約500メートル離れて相対に図書館および博物館が建てられている。
この2つはシンメトリーな、同形のものである。
建物全体は市政府同様、赤花崗岩であるが、
中央にいずれも極彩色の楼門形の木造屋階がある。
これがまるで取って付けたようで上下がマッチしておらず、
支那現下の政状を表現しているとでもいうべきだろうか…。
私たちが新京でやろうとしているものも、この轍を踏まないことを切に思う。
しかも聞くところによれば図書館も博物館も内容はなく、
ただ外向きの体裁と、世界に見劣りしないようにとの面子だけというあわれなものだ。
しかし市街から2里も離れ、道路、下水、水道、電燈、電話一切の
設備を完備した勇気と努力は貴ぶべきだ。
のちに聞いたことだが、この建設地域はほとんど無償に近い価格で一般から買い取り、
現在相当の価格で払い下げているという。
個人的収入を目標としたものであるとか、沙汰の限りであきれるほかない。
これらの建物のデザインは多分に米国の匂いがする。
庭園を同時に完成させているのは学ぶべきことだが、
滑稽なのは、四川路南京路の大繁華街にあるのと同様の交通整理機を、
ほとんど人通りもないこの道路に設置して交通巡査まで置き、ゴー・ストップをやっている。
実に面白いが笑うこともできず、それと同様に
繁華街の支那人デパートの上階には各種の娯楽設備があり、
人に知られてはいるものの観衆は1人もなく、
音楽をかけて奇声を挙げ、真面目くさって演技する様はむしろ奇異に映った。
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