午後3時、ハイデルベルヒ到着。
ここも濃霧である。駅に荷物を一時預けにしてぶらぶらと街へ出る。
道行く人が振り返ったり立ち止まったりして、
こちらをじろじろと見るので気持が悪い。
「なんだ田舎者が!」と元気を出して川沿いを歩いた。ネスカル河である。
河幅は広く、満々とした水は静かに流れている。
橋を渡って断崖に立ち、立派な住宅、庭園、つたやかづら、
藤などの巻き付いた古い家を眺めた。
12月も半ば、北海道よりも北寄りの地だというのに庭にバラが咲いている。
常緑樹は青々と丸くまた長く、建物との調和もよい。
昔、アカデミーなどで見た通りの景色である。
彫刻のある古い橋を渡り、正面の大きな寺院の前へ出る。
その両側の大きなバツトレスの間に粗造りの店舗がある様子が面白いので、
カメラを向けていると中から老婆が子供を連れて出て来て、
自分で編んだ刺繍付きのハンカチを買ってくれという。
1マルク50だという。2マルクやったら
『これでこの子のクリスマスの小遣いができた』と喜んでいた。
それからシルスの下まで行ったが、濃霧でついに姿を見せず
メインストリートを駅に向う。月曜の午後で大変な人通り、
ペーブメントは狭く押されながら駅に出た。
ハイデルベルヒは実に綺麗で優雅で、ドイツ1と言われる大学もある。
午後5時の汽車でウイスバーデンに向う。
車中、自分たちの席の前にちょっと粋な女がいた。
赤い唇赤い爪、人前でしきりと化粧をする。
フランクフルトで大きなトランクを降ろしてくれと言うので、
荷物などの世話をしてやる。ここでは約30分停車。
プラットホームは鉄骨の上屋の中に10線もあった。
ホームではたくさんの人が待ち合わせている。
3人連れの女が窓越しに私たちの方をじろじろと見て何か言っているが、
こちらから手を挙げて笑いかけたら向こうも笑いながら3人揃って手を挙げた。
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