3月6日
昨夜から雪でかなり寒い。
午前中からダウンタウンの三井銀行へ行き、最後のクレジットをドルで引き出す。
100ポンドばかり残っていたがこれが約500ドルだった。
この資金でサンフランシスコまで行かなければならない。
すでにビューローの支店に少々贅沢だったがこれに200ドル、
ここの支店に約100ドルいるとして、残額は約200ドルだ。
これで大陸横断中の小遣いからLA、サンフランシスコの滞在費に充てる。
船中の費用も相当入り用だろう。計算してみるとどうやら過不足なしにいくようだ。
三井銀行支店長のY氏と30分ばかり色々と話した。明日の夕方自宅へ招待を受けた。
その後、35丁目までバスで出てビューローへ行きK氏を訪問。
今日は土曜日で、2時半からメトロポリタンオペラでマチネーを観る。
入るとすでに開幕中で2〜3ドルの席はない。
やむなく5ドルの席に行くと2階のボックスだった。夜は25ドルだそうだ。
アレキサンダー・デューマ作の「椿姫」をやっている。
小説で読んだことがあったのでよくわかり、興味深く観ることができた。
特にここは音楽が良いようで、観覧席は7階までありほとんど満員だった。
一旦ホテルに帰り、食事のあと商工省の某氏とフレンチカジノに行く。
ここは食事をしながらレビューやシネマなど色々な余興をやるので、
入場料として3ドルとるがその金に飲食代も含まれる。
私たちは食事の後だったので数種の洋酒をとった。
館内はモダンで白と赤の2色にステンレス使いで案外と高尚にできており、
客も中流以上と見え、多くがタキシードなどを着込んでいる。
ここのレビューはなかなか美しい。
背景に光線を応用して極端に美しい色や線ができて見事なものだ。
これらを背景に半裸の女優が美しいダンスをやり、
その間には最新流行の婦人服のモードを見せるようなものもある。
ことにアラビアンナイトの一場面などは実に夢のような眺めだ。
10時頃帰宿。外はだいぶん寒い。
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