2010年10月1日金曜日

ヴェニスの名所を行く(1)




ホテルで地図をもらい早速外へ飛び出した。
細く暗い街路を折れると、正面がサンマルコ寺院やデュカル宮殿の広場である。
ここはヴェニス第1の広場で、名所中の名所といってよい。


一面に大理石を敷き詰め、三方は3、4階建ての古いルネッサンス風の建物で、
東側突き当たりの建物がサンマルコ寺院である。
ビザンチン風の金銀極彩色のモザイクが要所に用いられ美しい。


寺院の前には方形の尖塔が空にそびえている。
まわりの建物はみな回廊付きで、カフェや土産物店ばかりである。
サンマルコ寺院の南どなり、海岸の角にゴシックの有名なデュカル宮殿がある。
この付近一帯の美麗な建物は、実に古代の栄華を物語っている。
寺院前の広場にはたくさんの鳩がいて、豆が売られ、よく馴れたものである。


海岸に出た。ゴンドラが沢山いて乗れとしきりに勧めてくる。
遊歩場では大勢の人が散歩している。
案内人や絵はがきを売る店、即席写真屋などがうるさく勧めてくる。
ペーブメントに椅子を並べたレストランも繁盛していて夏を思わせる眺めだ。


ホテルの部屋では年頃の女中が来て、寝床の用意や戸締まりをする。
「イタリアはどうか、ヴェネチアはいいか」と一人でしゃべる。
帰りがけに1人で寝るのかと不思議そうな顔をしていた。
外は相当に騒がしくなかなか寝付かれない。
モーターボートや小蒸気船が盛んに通る。
まさに運河は道路である。
しかしいつしか夢地に入る。

運河の道をゴンドラの車に乗って

駅前に出てゴンドラへ乗った。
ゴンドラは前後に鳥の頭のような磨いた金物が付けられたボートである。
2人の船頭が鼻歌を歌いながら漕ぐ。
幾度か絵で見て話を聞いたゴンドラに初めて乗ったのである。


幅の広いキャナルを進む。両側は古い4、5階建てが並んでいる。
建物の玄関はその多くが運河に面している。
古びた壁、彫刻、入口の扉や玄関の石段を運河の水がひたひたと洗い、
風情のあるゴンドラが色塗りの杭に繋がれ、
円形の石橋にもたれて話す老人、
両側から覆い被さるようにして建つ古い建物、
陽が反射して絵のようである。


狭く曲がりくねった運河を通り、広い所へ出た。
正面に丸いドームの寺院が、折からのあかあかとした夕日を背に眩いばかりだ。




やがて左手のホテル・モナコに着いた。
ヴェニスでは運河が道路で、ゴンドラは自動車である。
通された部屋は運河に面し、天井も壁も金色に装飾され、
電燈機具や調度品も煌々とし、
金色大型のダブルベッドは少々憂鬱である。

水の都 ヴェニス

正月四日 
今朝も濃霧が深く、ついにここでは写真は撮れず、
ホテルで2度目のチェックをし、500リラを現金にした。
ヴェニスの宿を紹介してもらうと「ホテル・モナコ」がよいだろうという。


10時出発、汽車は今日も満員で、女2人子供2人のところへ割り込んだ。
間もなく女が2人増えた。今朝から少々頭が重いので眠りかけると、
子供が大きな声を出してうるさい。
うつらうつらしながら午後3時、ヴェニスに着いた。


沿道は平野で果樹園が続き、2階建ての白や黄色の壁に赤い屋根、
農家が多く草葺きで、ちょっと日本に似ている。一帯の景色は貧弱で汚い。
ヴェニス近くで汽車は水の中を進む。
濃霧の中に浮かぶ街が見えだした。
ヴェニスの街は陸より2里半の海中にあるのだ。
長い橋を渡って駅のホームに着いた。上屋はモダンに改造中であった。
駅前には金筋の客引きがたくさんいて、
ホテル・モナコの客引きもいたので手荷物を渡した。


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